「高分子」っていったい何?
小さな分子がたくさんつながった巨大分子を「高分子」と呼びます
高分子ときいて、ぱっと頭に思い浮かぶものは何ですか?丸い球体でしょうか?糸が絡み合った状態でしょうか?それとも、難しそうな化学式でしょうか?高分子とはどうなった状態なのか、どのようなものが高分子材料なのか、今回は「高分子」について、スリーボンドの研究開発員が解説します。
はじめにあるのは小さな「分子」
「分子」とは「原子という小さな粒」の集まりです。「水素原子」は水素の性質を示しませんが、「水素分子」は水素の性質を示します。このように、物質としての性質を示すようになる最小単位を「分子」といいます。
これら分子の中でも、繰り返しつなげることができる比較的小さな分子からなる化合物を「モノマー」といいます。繰り返しつなげていくことを化学反応の分類では「重合」といい、重合によってたくさんのモノマーがつながった「ポリマー」という高分子化合物ができます。さらに、ポリマー同士が複雑に絡み合うことで、「架橋ポリマー」といった巨大な高分子材料を形成します。
簡単に路線図に例えるとどうでしょうか?線路を形成するためのレールや鉄がモノマー、線路がつながってポリマー、様々な路線が絡み合うことで路線図のような、より巨大な高分子となります。
分子のつながった長さで状態が変化する
ポリエチレンを例に見てみましょう。
「エチレン」の分子が繰り返し繋がることでできた高分子を「ポリエチレン」といいます。ここでは、モノマーがエチレン、ポリマーがポリエチレンとなります。
ポリエチレンは、ポリ袋、化粧品容器などに使われていて、私たちに身近な高分子材料です。このポリエチレンはエチレンの繋がっている長さによって状態が変わります。繋がりが長くなるにつれて、オイルのような液状、ワックスのようなペースト状、そしてポリ袋や容器のような固まり状に変化します。
同じポリエチレンから出来ていてもポリ袋と化粧品容器では「固さ」や「柔軟性」が異なります。これは繋がっているエチレンの長さが違うからです。同じ名前でも、構造が異なると状態や物性が変わるのが高分子です。
ちなみに、ポリマー、ポリエチレン、ポリ袋の言葉にある「ポリ(Poly-)」は、ギリシャ語の接頭辞で、「たくさん」という意味があります。
身の回りにあふれる高分子
私たちの身の回りにはたくさんの高分子があります。種類と一緒にどんなところにあるのか見てみましょう。
・天然高分子(生体高分子):生き物の体の中で作られた高分子
(例)天然ゴム、肉(タンパク質)、植物(多糖)、遺伝子など
・合成高分子:人間が創り出した高分子
(例)合成繊維(ナイロン、ビニロン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタラートなど)、合成樹脂(プラスチック)(ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、フェノール樹脂など)、シリコーン樹脂(シリコーンゴム、シリコーンオイル)、合成ゴム、ビニール袋、ペットボトル、水族館の水槽(透明アクリル板)、化粧品の添加剤、接着剤など
・無機高分子:天然にあるけど生き物の体の中で作られない高分子
(例)ガラス、ダイヤモンド、岩石(水晶、石英、雲母)など
・半合成高分子:天然高分子から化学的に誘導された高分子
(例)セルロイド、ニトロセルロース、再生高分子(再生繊維レーヨン)など
ちなみに、スリーボンドが作っている接着剤の多くも「高分子」にあたります。
「高分子」が私たちの生活に身近な存在であることが分かりましたか?次回は、人間が作り出した高分子「合成高分子」である「プラスチック」について、その種類とリサイクルについて考えていきましょう。