2024/12/06
Q

なんでもくっつける"最強接着剤"って結局、どれ?

A

みんな違って、みんな“最強”!

皆さんが接着剤を使用するのはどんな時でしょうか?例えばよくあるのは、大事なものを落としてパーツが欠けてしまったので接着剤で修復する、といったシチュエーションかと思います。その際にホームセンターに行って接着剤を探すと、様々な種類の接着剤が売っていて迷ってしまいますよね。「早くしっかりくっつけば、正直どんな種類でもいいのに・・・」というのが消費者である皆さんの気持ちだと思います。

「○○用と書いてあるけど一度使ったらしばらく使わないし、できれば汎用的に使用できる接着剤がいいな。」
「とにかく早く、強く固まってくれるものがいいな。」

皆さんが接着剤に求めるポイントも様々だと思いますが、どんなシチュエーションでも使える万能接着剤、つまり“最強”といえる接着剤は存在するのでしょうか?

接着剤における“最強”とは、何か?

“最強の接着剤”のための条件を考えたときに、まず浮かぶのは「接着強さ」ではないでしょうか。どんなに引っ張っても取れない、あらゆる力にも耐えうる接着力を有する接着剤であれば、“最強の接着剤”の名に相応しいような気もします。

ただ、日常の中で接着剤にかかる負荷は引っ張られる力だけではありません。最強の接着剤と呼ぶために、耐えなければいけない外部からの刺激にはどんなものがあるのか考えてみましょう。

・水や油、薬品などの付着
水に塗れたり乾いたりを繰り返す箇所や、オイルや薬品に常に触れているような箇所にも、接着剤は使用されています。どんなに引っ張っても取れない接着剤だとしても、雨に濡れたらすぐに取れてしまうようであれば、最強とは言えません。耐水・耐油性、耐薬品性も接着剤を選ぶ大事なポイントになりそうです。

・熱
接着剤は化学反応によって硬化しますが、熱により反応が促進されたり、硬化中に熱が生じたりすることもあり、接着剤と熱は切っても切り離せない関係です。硬化した後の接着剤であっても、熱を加えることで接着強度が落ちてしまうことがあります。使用中に熱を持つ機械や、季節によって熱い寒いを繰り返すような場所で使用される接着剤の場合は、温度に対する耐性も重要です。ちなみに熱に強い接着剤、シリコーン樹脂であれば200℃くらいの熱にも耐えられます!

上記のように、外部からの刺激に対する耐性があれば良いか?というと実はそれだけではないのです。

・被着体に対する万能性
接着剤が塗れなければくっつけられない、というのはご存じの通りかと思いますが、しっかりと塗るというのが意外と難しい場合があります。塗るということはつまり、くっつけたいモノ(被着体)の表面に接着剤がしっかりと馴染む、ということです。ただ被着体の素材と接着剤の相性が悪ければうまく馴染まなかったり、接着面(接合部)に凹凸があると全面に接着剤が行き渡らないなど、被着体の素材と接合部の状況を見ながら接着剤選びをするのが重要になります。

・硬化時間
接着剤は化学反応によって硬化しますが、種類によって進行のスピードが異なります。瞬間接着剤は、空気中に含まれる水分によって、その名の通り瞬時に反応する接着剤です。一方で時間をかけて固まるのが、シリコーン樹脂などのタイプで、最大48時間かけて硬化するものもあります。すぐ固めてすぐ使いたい!という場合には、48時間も待てませんね。

・安全性
接着剤のタイプによって材料は様々ですが、現代で使用されている接着剤には多くの化学物質が含まれています。例えば普段皆さんが使用するような溶剤型接着剤においても、溶剤・樹脂・添加剤などの化学物質が用いられており、人体や環境への影響もゼロではありません。最近では人体や環境に影響の少ない無溶剤型接着剤も増えていますが、使用用途に合わせて安全に使用出来る接着剤かどうかを確認する必要がありそうです。

というわけで、皆さんが接着剤を使用するあらゆるシチュエーションに対応できる、万能な“最強接着剤”を選ぶのは、非常に困難であると言えます。

各素材の“最強接着剤”を見てみよう!

木材なら…
木材は多孔質な素材です。素材表面の小さな穴に接着剤が入り込んで硬化するので、しっかりと接着をすることができます。 使用できる接着剤も比較的多様で、特に水性の木工用接着剤は安価で使いやすく強力に接着することができます。ただ水性の木工用接着剤は完全に硬化するのに時間を要するので、硬化するまでしっかりと固定をするか、木工用の瞬間接着剤を使用すると良いでしょう。

プラスチックなら…
プラスチックの中にも実はたくさんの種類の樹脂が存在します。「プラスチック用」と記載のある接着剤でも、樹脂の種類によっては接着しにくいものがあります。例えば、PP(ポリプロピレン)PE(ポリエチレン)などは私たちの身近な所に多く存在する樹脂ですが、接着剤が弾かれてしまいうまく馴染まないため、接着が難しい素材になります。まずは接着したいものがプラスチックの中の何という種類なのかを確認してみましょう。接着剤が馴染みにくい素材の場合は、プライマーという特殊な液体を接着面に塗ることで、 馴染みやすいように加工することができます。

金属なら…
金属をくっつけると言えば、金属を溶かして固める溶接を思い浮かべる方も多いかと思いますが、 金属に適した接着剤を使えばしっかりと強度のある接着をすることができます。 一般的に金属用として販売されている商品は、二液を混ぜて使用するエポキシタイプが多いようですが、スリーボンド商品で金属同士の接着剤といえば「嫌気性封着剤」が主流です。空気の遮断と金属イオンの供給により硬化する接着剤で、ネジ部分の接着などに多く使用されています。

ゴム・革なら…
ゴムなど柔らかい素材に対して硬化後にガチガチに固まる接着剤を使用してしまうとはがれやすくなってしまいます。柔らかい素材には、接着剤も乾いた後にも柔軟性が残る弾性接着剤などがおすすめです。高強度の商品も多いので、しっかりと接着することができます。ゴムの中でもシリコーンなど接着剤が馴染まない素材の場合には、プラスチックと同様にプライマーを使用してあげると良いでしょう。

壊したモノを修復するときや自分でモノを作るとき、くっつけたいモノに合わせてしっかりと接着剤選定をしてあげることで、モノの寿命を延ばしてあげられる可能性があります。モノを大切に使う気持ち=接着剤をちゃんと選ぶこと、といっても過言ではありません。
是非今後の接着剤選びの参考にしていただけると幸いです。

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